とよけんのブログ

地域✕企画・スパイス料理・ベネズエラ音楽についてゆるーく書いてます。

地方自治体がコミュニティ育成にも投資すべき理由。

こんにちは、とよけんです。

色んな方から「facebook見てるととよけんはかなりいろんな地方に行ってるよねー」「で、そこで何してるの?」と聞かれます。

端的に言えば地域のコミュニティ育成の仕事をしています。

 

もうちょっとちゃんと言うと、地域の課題解決を目指す人達に域内外から仲間を増やす取り組みと、仲間が増え続けるための仕組み・動力を地域に根付かせる取り組みをやっています。仲間を増やすことは単年で仕掛けつつも、いつまでも他者・他事業者に依存しながら増やしていても仕方がない。最終的には地域の中で可能な限り主要な取り組みが完結するほうが良いと思っているので、その仕組を納品しながら実績を出していくことを目指しているわけです。

 

最近総務省も強調するようになってきた関係人口増加みたいなものが、もう少し知られている言葉で言い換えると近いものだと思います。ですが、正直こういうコミュニティ育成の話が全部の自治体さんにウケるのかと聞かれると、何とも言えないなーというのが実感です。「もっと短期的即効型の施策は無いのか」「いったいどんくらい移住するんだ」などの意見をいただくこともしばしば。

確かに私が企画してきたツアーで移住された方がいるので、過去からの推論で幾ら幾らやれば何人みたいな数字を出せなくもないのですが、それは結局各地域の方々が魅力的だったり、その方の移住のお世話を地域の方々がしてくださったりしたからこそおきた結果なわけです。その数字をもとに、自治体側が無責任に委託業者依存になってもなぁと複雑な気持ちになっています。

ですが、そういった数値の議論とは別に、私としてはやはり長期的に見てコミュニティ育成にはきちんと投資すべきと思っているからこそこの仕事をさせてもらっているので、今回はその理由を少し書こうかと思います。

 

関係人口の議論でよく言われるのが、都会or移住のように0or1の議論じゃなくその間を狙えるから良いよねーという話だと思いますが、そういうグラデーションで投資が回収できるという以上の理由があると思っています。 

ここで、移住促進の必要な要素を、「①仕事の情報の可視化・マッチング」「②住まいの情報の可視化・マッチング」「③コミュニティの接続」の3つだと定義したいと思います。ゆるーく言い換えると、「今より仕事も良いし、住まいも良いし、周りの人とかもいいなー」ってなれば移住するよねって話です。無論、親の介護、子供の教育など、これらに含みきれない要素がある故に例外も発生するのですが。

 

多くの自治体が過去取り組んできたものは、①と②の仕事や住まいの斡旋なわけです。移住特別サイトを作って空き家バンクの情報載せたりってやつですね。そして私達のような会社がずっと取り組んできたのが③のコミュニティの支援の部分なんです。特にうちは地域の課題解決(=地域をより良い姿に変えていく取り組み)に共感する人たちのコミュニティづくりをテーマとしてやっております。

 

ここで一つ、コミュニティ育成が大事な理由を示すと、この③が抜けていると①、②の仕事や住まいの斡旋もなかなか投資対効果がでないということです。何故かと言うと仕事や住まいの情報の可視化は、地域に対して一定の関心を示す層がいてこそ初めて効果が出得るアクションだからです。さほど関心を示してくれている人がいない中で、いくらその地域の仕事や住まいの情報を見せたところで、いやいやそもそも興味ないからって反応が市場から返ってくるわけです。

 

更に踏み込むと、③のコミュニティ支援だけで仕事や住まいの良質なマッチングができてしまうことがあるのです。なぜなら、地域において本当に魅力的な仕事や、良質な空き家の情報は、コミュニティの外にいる一般大衆に開かれておらず、コミュニティの内部にたくさん滞留しているからです。また、コミュニティの中ではそのようなマッチングのためにお世話を焼いてくれるプレイヤーがたくさんいることもコミュニティ支援でワンストップで仕事と住まいのマッチングが済むことに寄与しています。

 

都会では仕事や住まい情報を掲載し、外部の人とマッチングするサービスを提供するプレイヤーがたくさんいます。確かに、原則的にはその種の情報は広く一般に公開し多数のプレイヤーにその獲得を競わせることで、提供者側にとって最も優良な条件でマッチングを完了させることが合理的と言えるでしょう。

 

一方地方ではどうか。地方で空き家バンク運用者の方からよく聞くのが、なかなか空き家がないという話。だが実際には「(外の誰かも知らない人に貸しても/売っても良い)空き家が無い」という方が現状を適切に表していると思います。仕事についても、人手が必要なもののうち、役場の求人情報に掲載されているのはごく一部と言えるでしょう。実際は地域なんて空き家だらけ、人手不足だらけなわけですが、その情報が外部に広く公開されマッチングが進むことは少ないわけです。

 

コミュニティ育成支援の話に引き戻すと、上記のような空き家や仕事の情報というのはひとたびコミュニティの中に入ると溢れるように出てくるわけです。「あそこの家空いてるんだけどどうだろうか?」「自分の実家空いてるんだけど住んでもいいよ」「この仕事手伝えないか」色んな声が出てきます。そのどれもが空き家バンクや求人情報のまとめには載っていない情報であり、外部向けのプラットフォームに載っている情報より魅力的なものばかりなのです。

つまり、コミュニティ育成の投資は、結果として仕事や住まいの情報の可視化・マッチングまで含めて引き起こす力があり、且つ仕事や住まいのマッチングが行政が手を貸さずとも市民間で自然と進んでいく動力を持つ取り組みなのです。

ちなみに、前段の前提と少し矛盾するのですが、実は地方だろうが都会だろうが、結局コミュニティ内でしか流通しない情報のほうが質が高いというのは変わらないと思うのです。リファラル採用のような形での仕事のマッチングや、知り合いづてでしか募集しないシェアハウスなどがその典型でしょう。余談ですが私は今の仕事も知り合いづて、住まいも知り合いづてで巡り合ったシェアハウスです。

 

自治体主導の仕事情報・空き家情報のマッチングは、マッチングを量的にしか捉えていないがために、こうしたマッチングにおける「質」の観点が抜けおちていているのでしょう。本来のKPIは量的なマッチング件数ではなく、質の高いマッチング数、そしてマッチングしたことによって起きる地域の活性効果・経済効果やその効果持続性だと私は思っているのですが。

仕事情報・空き家情報のマッチングを目指して取り組みをすること自体は否定するつもりもなく、できる範囲でやりきると良いとは思います。ですが、その取り組みで行き詰まっているのであれば、是非一度コミュニティ形成からの良質なマッチング促進に着眼されてはいかがでしょうか。